第三者意見


駿河台大学経済学部教授
東京工業大学大学院兼任講師
博士(経営学) 水尾順一

略歴

日本経営品質学会副会長、日本経営倫理学会常任理事、日本マネジメント学会理事、経営倫理実践研究センター上席研究員、2010年ロンドン大学客員研究員、資生堂社友ほか、著書『逆境経営 7つの法則』朝日新書、『CSRで経営力を高める』東洋経済新報社など

住友林業株式会社(以下、同社)における「環境・社会報告書2011」の第三者意見を執筆するに当たり、筑波研究所を見学させていただきました。同社のCSR方針にある、幸循環を「活かす、育てる、つなぐ」活動について現場・現実・現物の三現主義に基づき、その実際を確認しました。その上で、「CSRの理論と実践の融合」を社会に促進してきた立場から、同社の「環境・社会報告書」について以下に第三者意見を申し述べます。

高く評価できる点

CSRの継続的改善とステークホルダーへの情報開示という視点から、「守りと攻めの戦略的CSR」が十分に開示されています。

本書は、コンプライアンスやリスクマネジメントなども含めたガバナンス体制や、雇用、調達、顧客との関係などの社会性、そしてCO2削減、森林保全、生物多様性など環境、さらには経済性報告など詳細の数値が盛り込まれ網羅性に富んだ報告書です。
実際に筑波研究所を見学させていただいた折も、太陽や風、緑の植物を利用した「涼温房(夏涼しく、冬暖かい)」の住宅や、「名勝 御室桜」など組織培養による貴重な種の保存に驚きと感動を覚えました。これらは世界レベルで問題となっている地球環境や生物多様性などの社会的課題の解決に結びつく一方で、長年にわたって蓄積された同社の強みであるコア・コンピタンス(競争的中核能力)でもあります。こうした社会と同社のWIN-WINの関係を創造する活動も十分に開示されています。
しかも本報告書の作成に当たっては、社外の意見をもとに同社の事業戦略を踏まえ構築された4つの重要課題に基づき策定されたもので、同社が伝えたい方向性が明確に示されています。
また、グローバルコンパクトやGRI、環境報告書ガイドラインに加えて、2010年に発行されたISO26000も参照しており、先進的でもあります。
さらに多くの項目で、CSRの方針・計画と実績を対比させ、次年度以降の課題を明確にすることで、PDCAのマネジメントサイクルに結びつけており、CSRの戦略的な位置づけが明確になっています。
加えて社員や取引先、お客様など多様なステークホルダーの声を随所に掲載することで、現場・現実・現物の三現主義に基づき、掲載内容に具体性と客観性、信頼性を高めています。
以上のとおり、本書は戦略的かつ信頼性と透明性が高く、CSRの継続的改善とステークホルダーへの情報開示がなされた秀逸な報告書ということができます。「公正、信用を重視し、社会を利する事業を進める」という住友精神が具現化されたものとして、同社の持続可能な発展に結びつくことを心から祈念いたします。

今後の改善に期待する点

未来志向のステークホルダー参画型のCSR活動「ドリームチーム2040(仮称)」を期待します。

同社は2000年代に、社員が一体となって住友林業グループにおけるCSRの未来を考える活動を進め、日本企業の中でも先進的な役割を果たしてきました。東日本大震災が発生し社会の価値観や働く社員の仕事観も変化しているいま、新たな時代のCSRを考えることも必要とされます。CSRの先進性をもつ同社だからこそ、その活動の復活が期待されます。たとえばCSRの超長期ビジョンを考える新たなプロジェクト「ドリームチーム2040(仮称)」を立ち上げ、CSR活動を推進する主体となる社員が中心となり、多様なステークホルダーの参画型CSR活動の推進を期待します。

WEBと冊子版との併用でCSR報告書のアクセシビリティーを高めることを期待します。

本CSR報告書は、極力多くのステークホルダーに読まれることで、同社に対するコーポレート・レピュテーションも一層高まることとなります。現在はWEBに絞った報告となっていますが、WEB版は積極的にステークホルダーがアクセスする必要性があります。一方、紙媒体による冊子版の報告書はアクセシビリティー(手にとって読みやすい)の高さという点ではWEB版に比較して効果的です。
CSR報告書のあるべき姿としてはWEBと冊子版の併用が好ましい形態ですが、地球環境保全のために紙資源の削減ということを念頭におくならば、ほかの報告書との一体化も一つのあり方です。近年話題のアニュアル報告書とCSR活動が一体化された統合レポートもその一つです。しかし、より多くの読者に広くやさしくという視点から考えれば、現在の会社案内の充実と一体化を目的として「住友林業コーポレート&CSRガイドブック」の発行が効率的かつ効果的と考えます。
企業とCSRの未来を考える報告書として先進的な役割を果たしてきた同社に対して、WEBと冊子版の効果的な併用を再考いただくよう期待します。

筑波研究所の構造実験棟や熱帯温室を視察

第三者意見を受けて

今年の第三者意見は、駿河台大学経済学部教授の水尾順一様にお願いしました。
水尾様には当社のすべての事業の根幹である「木」について、要素研究から実施研究までの概要をご理解していただくため、「住友林業筑波研究所」で、環境共生住宅の検証をはじめ、木造住宅の構造実験、未来を見据えた植林技術の様子などを実際にご覧いただきました。

東日本大震災の発生を機に、社会の価値観や、エネルギーの消費課題、住まい方に関する考え方などが大きく変化しつつある中、「新たな時代のCSRを考えていくことの必要性」についてご指摘を頂戴しました。中長期的な視点に立ったCSR活動を念頭に置き、その取り組みを邁進していきたいと思います。

コーポレート・コミュニケーション室長
中嶋 一郎